アジア諸国に展開する場合、統括会社を置く国は、直感的にシンガポールか香港だろうと思うことはほぼ正しいのですが、企業によっては別のところが良いかもしれませんので、もう少し範囲を広げてみていきましょう。
統括会社の国を検討するに当たって、考慮に入れるのは概ね①地理的利便性、②インフラ、そして③税務の3点でしょう。
国 | 中国 | 香港 | シンガポール | タイ | インドネシア |
法人税率 | 25% | 16.5% | 17.0% | 20.0% | 25.0% |
個人所得税率 | 3~45% | 標準15% 累進2~17% | 2~20% | 10~37% | 5~30% |
キャピタルゲイン課税 | 課税 | 非課税 | 非課税 | 課税 | 課税 |
国外関連者からの配当 | 課税 | 課税対象外 | 要件を満たせば非課税 | 要件を満たせば非課税 | 課税 |
過少資本税制 | あり | なし | なし | なし | なし |
地理的利便性 | 外貨規制が多いため、国内に複数企業があればメリットが大きい。 | 中国華南地域との距離が近い。 | 約3時間でASEAN主要国へアクセス可能。 | ラオス・カンボジア・ミャンマーとのアクセスが良い。 | シンガポールと同じ。 |
インフラ | 高学歴の人材インフラも整備されつつある。 | 都市としてのインフラは十分。英語も公用語。 | 都市としてのインフラは十分。英語も公用語。 | 交通インフラや人材については整備中。 | 交通インフラや人材については整備中。 |
以下、総括しましょう。
(香港・シンガポール)
中国とASEAN諸国との間にあるという立地。整備されたインフラ、税負担の軽減がメリットです。
(中国)
巨大なマーケットが最大の魅力。また統括会社の誘致に向けた優遇策も大きい。厳格な外貨管理規制により、中国国内に統括会社を設置することには、スムーズな事業展開に当たって大きなメリットがあります。北京は政府のロビー活動が必要な大手企業に選択され、上海は製造業の進出エリアが近郊にあり(江蘇省や浙江省等)、さらには上海港の存在や経済の中心地になるため、比較的多くの企業から選択されているようです。
(タイ)
地域統括会社と認定されれば、法人税率が10%になるなど税金のメリットも大きい。地理的にもASEANの中心にあり、整備されたインフラは魅力的。但し人材インフラは、香港やシンガポールと比較すれば、これからといったところです。
(インドネシア)
人口の多さから市場としては非常に有望です。都市や人材のインフラも急速に整備されつつありますが、税負担はそれほどのメリットはありません。