さて、一つづつ中国における資金調達手段のメリットやデメリットを見てみましょう。親子ローンスキームは、日系の現地法人が日本の本社から直接ローンを受ける方法であり、中国に進出する日系企業が最も多く行っている資金調達方法です。特に進出間もない企業や、中小企業で比較的規模の小さな法人にとって、一般的といえます。
原資は親会社が株式や社債で調達する場合もありますが、日本の国内金融機関から融資を受けて、それを現地法人へ貸し付ける方法です。親会社から現地法人への融資は、親会社から調達した外貨(日本円やアメリカドル)で行われます。中国国内では外貨決済は禁止されておりますから、現地法人が資金を使うためには、人民元と交換しなければならず、そのときは、必ず外貨管理局への申請をして、認可を受ける必要があります。そのためには資金詩を明示しなければなりません。
親子ローンは外貨による借り入れとなりますので、「投注差」の範囲内でしか許されません。従いまして、登録資本との関係で借りられる金額が決まってしまいます。
親子ローンは通常短期資金の調達手法として用います。1年以内に返済できなかった場合には、投注差の枠が埋められ、次の外貨借り入れに適用される枠が減少してしまう点に注意が必要です。
親子ローンにつきまして、手順は次のようになります。
(1) 日本の親会社が、現地法人向け融資のための資金が必要な場合、日本国内の金融機関から自らの名義で融資を受けます。
(2) 現地法人に融資する資金は円かアメリカドル建ての短期借入金となり、現地法人の外貨口座に入れられます。この金額は投注差の範囲内に制限されます。
(3) 現地法人が調達した外貨口座の資金を用いる場合、中国外貨管理局に人民元へ換金するための手続きを行います。この際、換金後の資金使途を明確にしなければなりません。ここで契約書等エビデンスの提出が求められます。
(4) 原則1年以内の返済が必要になります。
(5) 現地法人が親会社に元利金を返済し、親会社も借りた先の日本の国内金融機関に返済します。
次にこのスキームのメリット・デメリットを見ていきましょう。
メリット | 親会社からの直接融資のため、金融機関の規制の影響は受けない。 普段付き合っている国内金融機関からの借入になり、その金融機関が現地に支店がなくても問題はない。 日本での調達になるため、金利水準が低利になる。 グループ内に余剰資金があれば、本社が融資を行わなくても活用できる。 |
デメリット | 外貨融資なので、金額が投注差の限度枠に限られてしまう。 人民元の換金が必要であり、外貨規制が厳しいと時間がかかる。 換金に際して、資金使途が厳格に管理されており、使途に制約がある。 |