フィリピン現地法人の資金調達

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フィリピンの日系現地法人が外貨で融資を受ける場合には、資本送金、親子ローン送金の実施時に要件を満たしたうえでフィリピン中央銀行(BSP)に登録することで配当金送金時に発生する外貨転及び親子ローン返済時等の外貨転が可能となります。

  増資 現地借入 親子ローン(外貨融資)
資金の出し手 日本本社 地域統括会社 現地金融機関 日本本社 地域統括会社 国外金融機関
通貨 ペソ ペソ ペソ・日本円・米ドル
現地法人の金利負担 なし あり(高い) あり
為替リスク なし なし あり(ヘッジ可)
資金使途 規制なし 規制なし 一部規制あり

上記登録については、出資後1年以内の登録及び親子ローン実施時の承認の必要あります。また、親子ローンの場合、一部、資金使途に制限があります。以下、増資、親子ローン、現地金融機関からの借入等のメリットとデメリットを見てみましょう。

・増資

メリット

・資本使途の考慮をする必要なし ローンの場合と異なり、増資の場合には現地法人の資金使途が問われることはない。

・配当益金不算入制度により95%非課税(日本親会社が25%以上の持ち分の場合) 日本における配当益金不算入制度により、親会社が受け取る配当金のうち95%は非課税扱いとなる。

デメリット

・増資元本の回収難易度が高い。 現地法人が仮に会社清算ということになっても株式所有分の回収難易度は非常に高い。

・配当時の為替管理対応の必要がある場合がある。 現地法人がペソ建収入しかない場合には、親会社への配当時に両替が発生する。従って、増資実行時にBSPへの登録をしておく必要がある。

・日本に配当する場合には配当源泉税10%が必要 フィリピンから日本への配当時には10%以上を保有していれば、配当源泉税10%が課税される。

・親子ローン

メリット

・現地子会社のデフォルトリスク検討は自社で可能 現地子会社のデフォルトリスク検討は必要だが、自社にてリスク許容の判断が可能

・現地子会社にとっては負債による節税効果がある 現地法人にとっては税引前純利益を小さくすることで節税効果があるが、日本の親会社と合算して考慮するとなると、必ずしも有利にはならない。

デメリット

・資金使途の検討が必要  ペソ建て収入の現地法人に親子ローンをする場合、資金使途が生産設備購入でないと、返済時に両替ができない。ドル建て収入がある場合には、資金使途が運転資金であっても可能。

・利子源泉税10%を納税する必要がある。フィリピンにおいては外貨建てローン返済時に10%の利子源泉税がかかる。

・移転価格税制を考慮する必要がある 親会社においては、海外子会社の受取利息は移転価格税制の適用対象となる。子会社の信用リスクに応じたスプレッドを上乗せして利率を決定する必要がある。

・返済時の為替管理対応の必要がある。 フィリピンの現地法人がペソ建ての収入を得ている場合には、返済時に両替が発生するため、親子ローン実施時にBSPに登録しておく必要がある。

 

・現地資金調達

メリット

・現地通貨建てでの調達が可能 フィリピンペソは規制通貨であるため、ペソ建て借り入れを実施する場合には、地場銀行からの借り入れをする必要がある。

・現地子会社にとっては負債による節税効果がある 現地法人にとっては税引前純利益を小さくすることで節税効果があるが、日本の親会社と合算して考慮するとなると、必ずしも有利にはならない。

デメリット

・親会社保証が必要  海外子会社が現地で金融機関から借入れを行う場合は、親会社からの保証が必要になることが多い。また、フィリピンでは外国人の土地の所有ができないため、不動産担保ローンは組めない。

・親会社からの保証があっても借入金利が高くなる。 カントリーリスクを考慮すると、コストが割高となる。

・本社での財務集中管理が難しい 親会社が財務を本社で集中管理を行っている場合には、現地法人に任せるわけにもいかず、現地子会社で財務専門人材を雇用できるとも限らない。

・子会社が巨大になった時に、一社貸し出し規制に注意が必要 金融機関の1社貸し出し規制があり、銀行の資本金の25%を超える額を1つのグループに貸すことはできない。

 

【フィリピンにおける資金調達】

  増資 親子ローン 現地調達
資金使途
為替管理手続 × × △(外貨建ての場合手続発生)
源泉税 ×(配当源泉税) ×(利子源泉税) △(外貨建ての場合利子源泉税)
デフォルトリスク × 〇自社で検討可 ×親会社からの保証が必要
元本回収難易度 ×
移転価格税制 × △(債務保証料の検討が必要)
その他   子会社にとっては節税効果あり。 子会社にとっては節税効果あり。 財務の本社一括管理が困難 子会社が巨大化したときに1社貸し出し規制あり

撤退するときに元本回収が困難なため、現地金融機関からの借入も選択肢の一つと考えておきましょう。

(参考)基礎的経済指標

  2015年 2016年 2017年    
実質GDP成長率 6.1% 6.9% 6.7%    
名目GDP総額 293(10億ドル) 305(10億ドル) 313(10億ドル)    
一人当たり名目GDP 2,863USD 2,924USD 2,976USD    
政策金利 4.00% 3.00% 3.00%    
米ドル為替レート (期中平均) 45.5ペソ 47.5ペソ 50.4ペソ    
為替相場管理 変動相場制    

出所:JETRO

なお、日本政策金融公庫はフィリピン大手商業銀行の「メトロポリタン銀行」と「スタンドバイ・クレジット制度」にかかる業務提携契約を締結しております。

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