資本の払い戻しという利益の還流方法

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海外子会社の規模を縮小する場合には、資本の払い戻しを行うことになります。税務上はみなし配当や株式譲渡損益が認識されます。

(a) みなし配当の計算

日本の親会社が認識すべきみなし配当は以下の式のようになります。

みなし配当=払い戻し金額―対応する資本金等

ここで対応する資本金等の額は、海外子会社の簿価純資産に占める資本金等の割合で、比例計算します。この資本金は、原則的には会計上の資本金と資本剰余金の合計に対応します。

(b) 株式譲渡損益の計算

日本の親会社が認識すべき海外子会社株式の譲渡損益は以下の式のようになります。

株式譲渡損益=(払い戻し金額―みなし配当)-譲渡原価

ここでの譲渡原価は、資本の払い戻し直前の株式簿価に払い戻し割合を乗じることで計算されます。

上記のみなし配当は、対象会社が外国子会社配当益金不算入制度の「外国子会社」(発行済株式等の25%以上を6か月以上保有)の場合、95%免税が適用されます。このとき、現地でみなし配当に源泉税が課された場合には税務コストとなります。

あた、海外子会社の株式譲渡損益は、損金や益金の額に算入されることになります。

海外子会社からのみなし配当と株式譲渡損益を計算するにあたって、海外子会社の資本金等の額と簿価純資産の額の情報が必要になりますが、これは日本の税法に基づいて再計算した金額を使用することになるでしょう。とはいえ、その海外子会社が過去に買収されたものである場合、過去の取引をさかのぼって確認することは困難なため、実務的には、海外子会社の会計上の純資産の内容で、これらの計算を行っているものと思われます。この点は税務リスクが残るでしょう。

海外子会社の資本の払い戻しを行う場合の課税関係は国によって異なります。但し、基本的には日本のみなし配当と同じ考え方で、利益剰余金部分について、源泉税が課されることになります。

ちなみにタイにおいては、資本の払い戻しに当たり、利益剰余金の部分に15%の源泉税が課されます。この部分は日本の親会社にとっては税務コストになります。この場合、通常の配当は10%で済むため、資本の払い戻しの前に通常配当を行うことによって税務コストを下げることが可能です。

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