支店の設置が許される国であれば、駐在員事務所→支店→子会社設立の流れになってくるかと思います。海外の中では外資規制のために、業種によっては日本人(現地にとっての外国人)には、会社の設立が認められない場合や、持分に上限がある場合があります。
外資を誘致している地域に子会社を設置すれば、優遇税制の適用等、税務上のメリットが受けられる場合があります。
支店と子会社の形態でメリットやデメリットの比較は次の通りです。
支店 | 子会社 | |
現地での取り扱い | 外国法人 | 内国法人 |
現地での税務申告 | 必要 | 必要 |
課税所得の範囲 | 国内源泉所得 | 全世界所得 |
優遇税制 | 適用不可 | 要件に合致すれば適用可 |
現地での赤字 | 日本本社と相殺可 | 日本本社と相殺不可 |
日本への送金 | 原則源泉徴収はされない。但し支店送金税のある国がある。 | 配当は原則源泉税が課される。 |
二重課税 | 外国税額控除 | 外国子会社配当金益金不算入制度 |
移転価格 | 原則対象外 | 国外関連者の定義に合致する場合、対象となる。 |
子会社設立に、金銭出資を行う場合には、検討すべきところはそれほどありませんが、支店形態から移行する場合は、海外子会社に支店の資産を譲渡することになり、あるいは現物出資することになると、資産譲渡益について、支店の所在地国で課税されることもあります。
注意事項としては、次の3つがあげられます。
(1) 金銭出資による設立
海外子会社を設立した場合、日本本社は円建ての出資額をもって税務上の子会社株式の取得価額とすることになります。
(2) 金銭出資による設立及び支店資産の譲渡
海外子会社を金銭出資で設立し、当該子会社に支店資産を譲渡する場合、譲渡損益を認識することになります。黒字体質の場合には「のれん」の対価が問題になりやすいです。
(3) 支店資産の現物出資による設立
現物出資で設立する場合、適格現物出資に該当すれば、余分な税金はかかりません。
また、海外子会社の税務リスクについて、以下記載します。
(a) 子会社立ち上げ費用の費用を親会社、子会社のどちらで費用を負担するかの問題となります。
(b) ロイヤルティを日本本社が回収していないと、ロイヤルティ回収漏れを指摘してくる場合もあります。
(c) 製造設備の譲渡
取引価格は、時価を意識しましょう。