事業撤退には、清算と売却があります。ここでは子会社の清算についての注意点を見ていきましょう。
当然のことながら、海外子会社を任意清算する場合、その手続きは国によって異なります。しかし大きな流れは、会社が清算を決議し、清算人が会社資産を現金化して、債務の支払いを行い、残余財産を株主である日本の親会社に分配します。
子会社を清算するには、現地での課税関係を確認しなければなりませんが、通常は清算所得課税があり、清算に際して現地で納税が発生します。また、海外子会社が優遇税制の適用を受けている場合には、一定期間の事業継続が求められているため、その期間が経過する前に清算することになれば、遡って課税は避けられません。
また、子会社を清算する場合、清算の条件として税務調査が行われ、手続きが大幅に遅延することになります。税務当局にとっては、ここが最後の税金を取れるチャンスになりますから、大変です。
(中国のケース)
税収や雇用の関係から、中国の当局は撤退をほとんど認可しません。仮に清算手続きが終わると、清算所得は通常の企業所得税率(25%)で課税されます。税務登記の抹消には税務局による税務調査が必須です。税務登記の抹消完了後、清算監査を経て、残余財産の分配に当たり、利益剰余金部分に10%の源泉税がなされます。これは純粋に日本の親会社にとっての税務コストになります。
(タイのケース)
タイでも中国と同様に中々清算手続きが進みません。数年かかると思って良いでしょう。残余財産の分配に当たっては、分配額が投資額を上回る部分について、15%の源泉課税がなされます。この部分は日本の親会社にとっての税務コストになります。従って、解散決議前に10%の源泉税しか課されない配当を行っておくことも検討に値します。
海外子会社を清算する場合、日本においては次のような所得が認識されることになります。
(a) みなし配当:払込金額-対応する資本金等
(b) 株式譲渡損益:(払戻金額―みなし配当)-譲渡原価
日本の親会社が海外子会社を設立時から保有している場合には、日本の親会社の出資金額が海外子会社の資本金等と等しくなるため、大きな譲渡損益は出ないと思いますが、海外子会社が元々既存の会社を買収したような場合には、日本の親会社の買収金額が海外子会社の資本金等より大きくなることも多く、清算には譲渡損が計上されやすくなります。