統括会社が傘下に置く海外子会社(日本親会社にとっては孫会社に相当する)の株式を譲渡する場合、統括会社の所在地国における課税だけでなく、その海外子会社の所在地国で統括会社が課税される場合があります。
通常、統括会社はキャピタルゲインの非課税国に設置すると思いますので、海外子会社の株式売却に伴う統括会社の所在地国における課税は発生しないことが多いと思われます。
「事例1:シンガポールに統括会社があってインドの子会社を売却するケース」
(インド)
インドとの租税条約である日印租税条約では譲渡益課税が排除されていないため、インドにおいては譲渡益課税が行われます。
(シンガポール)
シンガポールとインドの租税条約によるとインドにおける譲渡益課税が排除されているので、所定の手続きを踏むことでインドにおける譲渡益課税を回避することができます。端的にはシンガポールの統括会社がペーパー・カンパニーではなく十分な事業活動を行っていることを示さなければなりません。
次に日本の親会社が統括会社自体の売却を行う場合を検討してみましょう。海外子会社の所在地国で譲渡益課税がある場合、統括会社が傘下の海外子会社を売却すると、海外子会社の所在地国で課税されます。しかしながら、日本の親会社が統括会社株式を売却すると、海外子会社株式は直接譲渡の対象とならないため、海外子会社の所在地国における譲渡益課税を回避できる可能性があります。
「事例2:香港統括会社(海外子会社)を通じて中国孫会社ごと譲渡してしまう場合」
(中国)
日本の親会社が中国の孫会社持分を間接的に譲渡する場合(香港子会社の株式を譲渡する場合)には、中国孫会社を保活する税務当局に対して、持分譲渡契約書等の書類を提出しなければなりません。このとき、中国の税務当局がこれを租税回避目的と認めた場合には、日本の親会社は中国の孫会社を売却していないのですが、中国で持分譲渡益に課税されるリスクがあります。
「事例3:インド法人の間接譲渡のケース」
譲渡対象であるインド国外の持株会社の株式の価値が、実質的にインドに所在している資産に由来している場合には、持株会社の株式の譲渡がインド所在資産の譲渡とみなします。つまり、持株会社がペーパー・カンパニーの場合には、持株会社の株式の譲渡によるキャピタルゲインにインドの課税権が及ぶことになります。