業績不振の海外子会社があって、その事業を継続すべき場合、海外子会社の事業再生を検討することになります。この場合、日本親会社からの支援を受けることになり、寄付金の扱いも絡めた税務上の論点が出てきます。また、親会社の一次的な支援では海外子会社を再生できない場合、海外子会社を整理することになります。
海外子会社が日本親会社からの支援を受けた場合、その支援は海外子会社の課税所得に反映されます。例えば日本の親会社が債権放棄を行う場合には、海外子会社で発生した債務免除益は課税の対象となります。そのため海外子会社に課税所得が生じないように債務免除のタイミングを十分に考慮しなければなりません。
ここで第二会社方式を検討してみましょう。これは、業績不振で債務超過等の状態にある既存の海外子会社(旧会社)の収益性の高い事業のみを新会社に移管したうえで、旧会社は清算するといい方法です。
この方式は、日本の税務上でよく問題になりますのが、新会社の役員や組織は旧会社からそのまま引き継がれているだけで、実態は何も変わりません。しかし、旧会社の清算に伴って、日本の親会社では清算関連損失(株式の償却損や債権放棄損)が発生します。このときに、日本の親会社から清算対象となる海外子会社へ寄付金認定されるリスクがあり、その場合には国外関連者寄付金となり全額が損金不算入となります。日本の親会社の損失負担の合理性については、「その損失負担をしなければ、今後より大きな損失を被ることになることが社会通念上明らかであるかどうか」(法人税基本通達9-4-1及び9-4-2)を検討することが必要です。なお、当該通達は非常に厳格に運用されます。経済合理性の有無を鑑み、やむを得ずその損失負担をすることに至った相当な理由を準備する必要があります。
上記理由から、第二会社方式による海外子会社の清算は一般的に税務リスクが高いものになりますので、仮にこの方式を採用する場合には、旧会社と新会社の実態が異なっていることが前提となります。
また、旧会社から新会社への事業譲渡に当たっては、資産買収の場合と同様の論点があります。再掲しますと、
- 税務上のれんの償却が可能か
- 繰越欠損金を引き継げる可能性はあるか
- 優遇税制を継続(または新規適用が)可能か
- 間接税にどのような影響があるか
を十分に検討する必要があるでしょう。