日本の親会社に無形資産があり、海外製造子会社に技術やノウハウを提供し、その製造子会社から直接外部に製品を販売している場合には、日本の親会社は、使用料(ロイヤルティ)を回収していると思われます。ここでの無形資産とは次のようなものが該当します。
- 技術革新を要因とする特許権や営業秘密
- 従業員等が経営、清算、研究開発、販売促進等の企業活動での経験を通じて作られたノウハウ
- 生産工程や交渉手順、さらに開発、販売、ファイナンス等のネットワーク
無形資産への利益配分は、当然その無形資産を形成したことによる報酬もありますが、そこで得られた利益を投下し、より良い無形資産を構築するための投資に回すための資金という意味合いがあります。それらは日本の優れたインフラがあったからともいえるわけで、安易に新興国に渡してなるものか、ですよね。いずれにしましても、無形資産の形成への貢献を判断するにあたり、無形資産を構築するための意思決定、役務の提供、費用負担、リスク等の機能を総合的に考えなければなりません。これらを考えたうえで、無形資産を作り出した所得をどの法人が享受すべきかが明確になります。どっちの国がは本来二の次です。
無形資産の帰属を判定した結果として、海外子会社からロイヤルティの回収を怠っていた場合は、国外関連者寄付金(全額損金不算入)とされる可能性が高く、注意が必要です。
無形資産の帰属を十分に検討した結果、海外子会社には重要無形資産はないとされた場合には、取引単位営業利益率法を用いて計算しているケースが多くなります。これは、海外子会社は日本親会社の無形資産を使用し、超過利益を利益という形で一度享受するものの、ロイヤルティを支払うことで、ロイヤルティ支払後の利益は超過利益のない状態、つまり、他の企業と同じ利益水準になります。
このケースでは海外製造子会社が日本の親会社の無形資産を活用して製造を行い、その製品を直接海外で販売する場合に注意を要します。日本親会社が一度海外製造子会社から製品を購入して、自ら販売する場合にはロイヤルティで回収するのではなく、ロイヤルティを鑑みた価格で購入する(製品の仕入価格を引き下げる)ことになると思われます。この場合にも棚卸資産の独立企業間価格を算定する必要があります。
一方、無形資産の帰属を十分に検討した結果、海外子会社に研究開発やマーケティングにおいて無形資産があると判定された場合には、利益分割法や残余利益分割法が用いられるケースが多くなります。
また使用料に対する課税関係としては、通常は、使用料の源泉税を現地で徴収されることになります。この源泉税は日本親会社では外国税額控除の対象となり、控除限度額内であれば、使用料は追加的な税務コストにはなりません。しかしながら、控除限度額が十分でない場合には、追加的な税務コストとなります。