事業はすべてうまくいくとは限りません。海外子会社が損失を計上することもあります。このとき、海外子会社側では移転価格税制上の問題が生じやすくなります。
また日本親会社側では、海外子会社に対する支援や処理、そのときの海外子会社側の債務免除益の要否も課題になりますが、主には、子会社株式の評価損、子会社に対する支援損の問題に対処することが必要となるのです。
評価損の計上要件は次の二つの要件の充足が求められます。
(1) 発行法人の資産状態の著しい悪化
(2) 価額の著しい低下
子会社整理のため、または再建のために、日本親会社が債権放棄をすることがあります。このとき、原則的に、日本親会社の負担する損失は、国外関連者寄付金として損金不算入の扱いになりますが、損失負担に経済的合理性があれば、損金算入が認められることもあります。
子会社支援の経済的合理性の有無は次のように考えられます。
(a) 損失負担を受ける者は「子会社等」に該当するか
(b) 子会社等は経営危機に陥っているか
子会社等が債務超過の状態にあることなどで資金繰りがひっ迫しているか
(c) 損失負担等を行うことは相当か
損失負担と行って今後被る大きな損失を回避できるか
(d) 損失負担等の額は合理的か
過剰支援でないか
(e) 整理・再建管理はされているか
子会社等の立ち直り状況に応じて支援額を見直すか
(f) 損失負担をする支援者の範囲は相当か
特定の債権者が意図的に加わっていないか
(g) 損失負担等の額の割合は合理的か
特定の債権者だけが不当に負担を重くしていないか
<子会社を整理する場合>
法人がその子会社等の解散、経営権の譲渡等に伴い、その子会社等のために債務の引き受けその他の損失負担又は債権放棄等をした場合、その損失負担をしなければ今後より大きな負担を被ることが明らかなため、やむを得ず損失負担せざるを得ないような状況であれば、その損失負担で供与した額は寄付金の額に該当しないものとされています(法基通9-4-1)。
<子会社等を整理する場合>
法人がその子会社等に対して金銭の無償もしくは通常の利率よりも低い利率で貸し付けや債権放棄したことで、それらが業績不振の子会社の倒産を防止するためにやむを得ず行った場合、合理的な再建計画に基づく等、相当な理由がある場合、その金額は寄付金の額に該当しないものとされています(法基通9-4-2)。