アジア主要国における移転価格文書の作成義務について

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ここでは、中国、インド、インドネシア、マレーシア、タイ、フィリピン、ベトナムの移転価格文書の作成義務についてみていきましょう。

(中国)
中国では、移転価格文書の作成は、企業所得税の申告期限である翌年の5月31日までに完了させる必要があります。そして10年の保管が要求されています。そのうえで、税務当局から資料を徴求された場合には、20日以内に提出しなければなりません。期間が短いために、言われてから作ったのでは間に合いませんから、事前準備が必要になります。但し、全企業ではなく以下の企業の文書化義務は免除されます。
(a) 年間の関連有形資産取引金額が2億人民元以下、かつその他の関連取引(無形資産及び役務取引)の4千万人民元以下の場合。
(b) 関連者間取引が締結済みの事前確認の対象範囲となる場合。
(c) 外資比率が50%未満でかつ中国国内の関連者とのみ関連取引が発生する場合。
しかし上記には例外規定があり、受託製造子会社等、限定された機能やリスクしかない中国会社が損失を計上している場合、同時文書を作成して税務当局に提出しなければなりません。また、企業所得税の申告書と共に提出する「関連者取引年度報告表」で、移転価格文書の作成有無が確認できます。この情報に基づいて、移転価格調査対象を選定していると考えられますので、十分に注意して記載しましょう。

(インド)
年間1千万ルピー超の国外関連取引を行っている場合、移転価格文書の作成及び保管が求められます。同時文書化が求められており、法人税の確定申告書の提出期限である11月30日までには移転価格文書を作成する必要がありますが、申告書と同時提出までは求められていません。但し、税務当局から移転価格文書の提出依頼の通知を受けてから30日以内に移転価格文書を提出しなければなりません。加えて、全事業年度に国際取引を行ったすべての者はインドの勅許会計士の作成した証明書(Form 3 CEB)を添付する必要があります。

(インドネシア)
保存義務はあるが、申告書との同時提出までは求められておりません。但し、税務当局の求めに応じてこれらの文書を提出できない場合には、他のデータで更正されることになります。なお、取引額の合計が100億インドネシアルピア(110万アメリカドル)未満であれば、文書化や比較可能性分析を実施する必要はないとされていますが、移転価格に関する更正処分を免除されるかは規則上明確になってはおりません。

(マレーシア)
関連者間取引を行う者は、同時文書を用意しなければならないとされています。また同時文書の中には、組織構造、事業又は産業の特徴及び市場の状況、国外関連取引、価格戦略、比較可能性分析及び機能やリスク分析、移転価格算定の選定・適用、文書の目次、その他の情報、データ、文書を作成する必要があります。
納税者は税務申告書と同時に移転価格文書を提出する義務はありませんが、税務当局からの要求があった場合には30日以内に提出が必要となります。また、移転価格文書はマレー語または英語で作成する必要があります。

(タイ)
同時文書化の規定はありませんが、税務当局の要請で移転価格文書を指定された期限までに提出する必要があります。

(フィリピン)
確定申告を行う時までに、移転価格文書を準備し、当該年度に行った関連者間取引につき、その対価設定の妥当性を立証する必要があります。同時文書化の義務はありますが、同時提出義務はありません。

(ベトナム)
移転価格同時文書化が規定され、法人税の申告時までに移転価格文書を作成・準備しなければなりません。税務調査時には30日以内に提出義務があります。正当な理由があれば、30日を超えない範囲で1回延長できますが、義務を果たさない場合は、50万から500万ベトナムドンの範囲で課徴金を課されます。

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