移転価格課税された場合には、国際的な二重課税が発生していることになります。中国には追跡管理制度があり、一度移転価格課税が行われますと、その年度から後の年度では(5年間)、対象期間の利益率が課税を受けた際の利益率を下回った場合には、課税を受けた際の利益率を基準として引き続き課税が行われます。
なお、移転価格課税をされた場合、通常は、日本がその国と租税条約を締結していれば、両国の税務当局間の相互協議で、他方の国で所得が減額され、還付を受けることができるようになります。関連者の一方が移転価格課税された場合、相互協議の合意で、他方の国外関連者に還付を行って二重課税を排除することを対応的調整と言います。このような相互協議での二重課税の排除の他、国内法による救済手段もあります。
しかし相互協議は、企業にとってはほとんど絵に描いた餅で、相互協議が行われることも稀で、協議が行われても合意に至るケースも稀、スムーズに対応的調整が受けられることは皆無に近く、どちらにしても相互協議は通常長期にわたりますので、その間の税務アドバイザーに対する報酬もバカになりません。日本側で移転価格課税を受けた場合には、通常は更正処分を受けていると思われます。この場合は、国内法に基づく救済手段を取ることになります。
まず移転価格課税により二重課税が発生した場合、次のようなプロセスをたどります。
- 日本と子会社の所在地国との間に租税条約があるか
- 租税条約がある場合、対応的調整の規定があるか
- 租税条約に対応的調整の規定がある場合、期間制限に関わらず合意結果を実施することとされているか
(対応的調整の規定がある場合)
韓国の例です。
(対応的調整の規定がない場合)
中国やインドネシアの例です。
(対応的調整があっても期間制限のある国)
タイの例です。
(インドの相互協議)
通常はインド子会社が移転価格税制に基づく課税をされた場合、インドでの実務的対応は、日本の親会社が日本の税務当局に相互協議の申し立てを行い、日本のぜ無当局がインドの税務当局に申し入れ、相互協議を開始します。