親会社からの資金を増資という形で行うスキームは、短期的中長期的な資金調達に優れています。つまり事業規模拡大や、設備導入工場増設等の長期資金ニーズに対応できる優れた手段です。なによりも、増資することで「投注差」の外債枠が拡大し、その後の親子ローンスキームも取りやすくなります。
増資は日本国内の取締役会での開催も含め、数か月にわたる事務手続きが必要になります。また、単独の子会社であればそれほど問題にはなりませんが、仮に地場企業との合弁企業として設立された合弁企業であるとすると、合弁会社の董事会に出席したメンバーの全員一致決議(董事会は3分の2の出席を要する)が必要となるため、持ち分割合の問題も出てきて、うまく増資が進まないケースもあります。
資金調達の手順は次のようになります。
- 親会社が増資資金を日本の金融機関から調達する場合には、親会社や現地法人の財務内容について審査を受けます。
- 親会社から現地法人に対して増資の資金を送金します。
- 登録資本を増額することで、投注差が広がり、以後の親子ローンの枠が広がります。
- 中国では増資は容易ですが、原資が困難なため、親会社が拠出した資金は配当金で回収していくことになります。
次の本スキームのメリット・デメリットを見てみましょう。
メリット | 外債ではないため、各種の金融規制を受けずに比較的柔軟な資金調達を可能とします。 現地拠点を持たない地方銀行等の支援を受けて増資資金を調達することが可能です。 日系の現地法人がローンの金利を負担せずに済みます。 |
デメリット | 親会社が投資した資金は、原則として配当でしか回収できない。 合弁会社の場合、パートナーとの交渉が必要で、増資ができない可能性もある。 増資の場合、定款の変更、新しい営業許可証の入手が必要となり、長期間の手続きを要する。 |
現状では、現地法人の資金調達手法は、増資によって長期資金を調達し、親子ローンで短期資金を調達する手法が主流となっており、親会社に依存している点が否定できません。
最近では日本国内市場の停滞や縮小傾向など親会社の業績も苦しくなる傾向があり、必要なタイミングで必要な額の資金を調達することが困難になっています。
そのため日系の現地法人が日本の親会社に依存する体質を変えなければ、海外での拡大もスムーズではなくなります。今のところは簡単だから、という理由で親会社に依存した調達を行っているとは思いますが、なるべく早期に現地法人が現地の地場の金融機関から調達できる体制づくりをしていくことが必要であると思います。
そのためにスタンドバイ・クレジットを活用するのが、現地の地場の金融機関から融資を受けるための有効なスキームになってくるでしょう。