日本以上に海外では地場の金融機関との付き合いが大切になります。一番心配しなければならないのは、「カントリーリスク」です。新興国では主材料が急に倍以上に高騰し、資金がショートする可能性もあります。
借り入れ実行をしなくても、借入枠だけは銀行に設定しておいた方が良いのです。特に進出間もないときは、現地法人の財務体力も十分ではないため、環境の急変に対して脆弱であり、余裕をもって借入枠を設定してもらう必要があります。このカントリーリスクの中には、急激な金融引き締めで資金ショートをする可能性があります。特に中国では起こりうるが、邦銀からも地場銀行からも買い入れ実行できないという最悪の事態もありえます。
金融引き締めの兆候があれば、借り入れをして定期預金にする、緊急時には借り入れと預金を両建てで膨らませておきましょう。当然平時であれば金利がもったいないので回避すべきです。この財務戦略を採用する場合、預金は一定金額の複数本の定期預金で運用します。自動継続にすれば管理が楽になります。そうしないと期日管理が大変です。定期預金の期間は1か月、3か月、半年、1年と分散するのがよいでしょう。
ありがちなのが、融資は邦銀と、給与支払いは地場の金融機関というケースです。日本でもメインバンクは決めますが、1行取引はしないはずです。いざというときに複数の金融機関と付き合っておいた方がいいです。1行取引をしていると競争原理が働かないため、サービス水準も低くなります。日本でも複数の金融機関と付き合っていると、あちらの銀行よりも安い利率で、とか支払手数料を下げますとか色々サービスしてくれますよね。それは海外でも同じことです。また、貸しはがしの危険もありますから、複数の金融機関と取引をしておいた方が良いわけです。但し、預金口座が多すぎるのは業務効率や不正リスク防止の観点から絞った方がいいと思われます。企業規模や借り入れ規模にもよりますが、邦銀2行、地場銀行2行と取引をするのが一つの目安になってくるでしょう。
邦銀と地場の金融機関にはそれぞれの強みと弱みがあります。それらを把握してお付き合いしましょう。
<邦銀現地支店と地場金融機関の強みと弱み>
強み | 弱み | |
邦銀現地支店 | ・日本語でコミュニケーションが可能。 ・借り入れを行う場合、日本の親会社の信用力を評価 ・情報源として圧倒的な信頼感 ・新制度導入や制度変更の際に、専門家による日本語のセミナーを開催 ・外為取引に強い ・パソコンバンクの使い勝手が良くセキュリティーにも配慮。 | ・支店数が少なく、大都市のみ ・個人業務に多対応していないところが多い(つまり給与支払い等に使えない) ・不動産担保融資に消極的 |
地場銀行 | ・現地における圧倒的な店舗網 ・ATM網 ・リテール(個人)業務は得意 ・不動産担保融資に対応可能 | ・日本語ができる行員はほとんどいない ・親会社の信用力は評価しない ・海外の支店網は貧弱 ・窓口対応は冷たい |
以下、まとめると次のようになります。
・借り入れは邦銀をメインとし、地場銀行を従で考えましょう
・外為業務(輸出入を含む海外決済、外貨預金含む)は邦銀1行に集中した方がよいでしょう。
・現地通貨の決済業務も邦銀1行に集中しましょう。
・現地通貨の定期預金は借り入れのある銀行に借り入れシェアを勘案の上配分しましょう。
・社員の給与振り込みは手数料の相見積もりをとり、最も安い銀行にお願いする(基本地場金融機関になります)
地場の金融機関とは、初期の段階から融資のお付き合いをしておくとよいのですが、それは無理というものです。それを可能にするのが、スタンドバイ・クレジットとお考え下さい。