海外で組織再編が行われた場合には、日本親会社ではみなし配当や株式譲渡損益を検討しなければなりません。再度申し上げますが、海外で適格合併であったとしても、日本で適格かどうかは日本の税法に沿って考えます。
まず日本の租税法上の合併に当たるかは次のような判断基準があります。
- 被合併法人の資産及び負債の全部が移転すること
- 被合併法人は資産及び負債の全部の移転後、速やかに解散すること
- 合併法人株式が被合併法人株主に交付されること
- 当事者間の契約だけでなく、上記(a)(b)(c)について、裁判所の許可など、当事者以外の機関による一定の法的手続きを経て行われること
繰り返しになりますが、日本の合併に当たっても、それは適格合併を意味するわけではありませんので、適格合併に該当するか否かについては、別途判定の必要があります。例えば中国では、再編対価として金銭の交付があっても少額の場合には非課税再編となりますが、日本では非適格合併となり株主課税が生じる可能性があります。
海外子会社が組織再編を行って、課税繰り延べの適用を受けている場合、タックスヘイブン対策税制の適用にも注意を払わなければなりません。つまり、特定外国子会社等の判定による租税負担割合の計算に当たり、繰り延べられた譲渡益を非課税所得として分母に加算する必要があるのではないか、ということです。この点については明文の規定はありませんが、租税負担割合の計算式の非課税所得は、海外子会社の所在地国の法令で現在だけでなく招待においても課税されないと思われます。このように考えますと、一時的に課税されない「課税の繰り延べ」は非課税所得と区別し、租税負担割合の分母に加算する必要がなくなります。
日本国内の組織再編で、国内子会社に海外子会社株式を移転させるような場合、その再編が日本の税法上適格組織再編に当たっても、海外では撤退に際しての子会社株式の売却時と同様に譲渡益課税が生じる場合があります。
グループ内の持分譲渡に係る特別税務処理
日本の親会社の中国子会社持分の譲渡については、中国に置いて譲渡益課税が行われます。すまり、日本国内の再編で、中国子会社の持ち分がグループ企業に移転した場合、その移転についても、中国では譲渡益課税の対象となります。
しかしながら、中国においては、一定の持ち分譲渡に特別税務処理の適用が認められ、日本の親会社から日本国内のグループ企業への譲渡については、中国における譲渡益課税が繰り延べられる場合があります。