地場の金融機関からの借入は、やはり金利の高さが気になるでしょう。しかし為替リスクを考えれば、決して金利が高いからと言って、敬遠してよいものではありません。資金調達の多様化として積極的に考えましょう。また為替リスク以上に厄介な制度のある国があります。それが外貨規制というものです。ここは中国を例に説明しましょう。
まず、中国で事業を立ち上げる場合には、営業許可等の様々な申請が必要になりますが、財務上の制約として、総投資額を定めて登録する必要があります。外資企業の「総投資額」は「外資企業の開設に必要な資金の総額、即ちその生産規模に応じて投入する必要のある基本建設資金と生産・運転資金の総和」(外資企業法実施細則19条)とあり、これは事業立ち上げに要する設備資金と運転資金の総額を際していますが、自己資金額と借入可能額の枠に関するものです。
このうち自己資本に当たるものが「登録資本」になりますが、過小資本を防ぐために、「総投資額」に応じて必要な登録資本の最低額についての規制があります。そしてこの「総投資額」と「登録資本」の差額を「投注差」と呼び、これが外貨を借り入れる場合の限度枠(その金額までしか外貨で借り入れてはならない)という規制があるのです。
このため、中国で事業を立ち上げる場合には、どの程度の事業規模を前提にするか、必要な運転資金量はどのくらいかを綿密に設計して、総投資額を登録する必要があるのです。だから事業計画が必須です。
資金に余力を持たせる方法としては、総投資額を大きくすること、つまり増資をすれば、投注差(外債枠)に余裕ができます。これを回避する方法としては、やはり現地金融機関からの借入が必須ですが、とはいえ、当然、融資は受けられません。それを回避する手段の一つがスタンドバイ・クレジットとなります。
現地法人が日本から設備を輸入した場合には、一部優遇措置があり、「外商投資産業指導目録」に記載された産業において、高付加価値設備を導入した場合、関税が免除になります。但し、その設備は税関監督機関が5年間所有権を持ちます。これを中国国内で転売する場合、事前に認可機関の承認を得て、輸入関税を支払わなければならなくなります。
さらに日本の消費税に当たるものとして、増値税があります。これは仕入などの購入金額に17%課税されますが、日本と同様に売上での課税額から仕入の課税額を控除できます。但し、増値税の還付には税務当局の発行した「発票」に効力があります、発表を取得しておかないと費用として認めてもらえず、機械設備を固定資産に計上できなくなり、減価償却も認めてもらえないので注意が必要です。
さすがに中国、がんじがらめです。
ここで総投資額と登録資本の比率に関する規定を表にまとめました。
総投資額 | 登録資本 |
300万USドル以下 | 70%以上 |
~1,000万USドル | 50%以上(最低210万USドル) |
~3,000万USドル | 40%以上(最低500万USドル) |
3,000万USドル超 | 3分の1以上(最低1,200万USドル) |
ない、総投資100万USドルの場合、最低資本は70万USドルの資本金が必要であり、海外からの資金調達は30万USドルまでしか認められないことになります。これ以上の資金が必要であれば、出資をするかもしくは地場の金融機関から借りなければならないのです。進出ばかりの企業では借りられません。それをカバーするのが、スタンドバイ・クレジットといえます。