タイの日系現地法人の資金調達手法は、親会社からの増資、親子ローン、そして地場の金融機関から借入となる。
増資 | 現地借入 | 親子ローン(外貨融資) | |
資金の出し手 | 日本本社 地域統括会社 | 現地金融機関 | 日本本社 地域統括会社 国外金融機関 |
通貨 | バーツ | バーツ | バーツ・日本円・米ドル |
現地法人の金利負担 | なし | あり(高い) | あり |
為替リスク | なし | なし | あり(ヘッジ可) |
資金使途 | 規制なし | 規制なし | 規制なし |
次に、それぞれの資金調達手法におけるメリットやデメリットを上げておきます。
増資 | 現地借入 | 親子ローン | |
メリット | 資金使途が自由 利息の支払が不要 | 子会社のデフォルトリスク検討不要 親会社への資金の還流は、子会社が 赤字であっても返済条件に従って可能 (黒字の場合)子会社にとっては負債による節税効果 | 移転価格税制を考慮不要 (黒字の場合)子会社にとっては、負債 による節税効果 |
デメリット | 外資規制による出資比率に留意が必要 増資元本の回収難易度が高い 株主総会開催や登記手続等が発生 配当源泉税(10%)が必要 | 移転価格税制を考慮する必要あり 現地通貨建ての場合、親会社に為替リスク負担あり 利子源泉税による徴税(15%)あり | 親会社保証が必要 親会社保証があっても日本での調達に比べ、金利が高くなる傾向がある |
特に増資においては、外国資本が50%以上ですと参入が規制される業種があります。その中には外国人の営業が認められないもの、禁止だが閣議承認を得た商務大臣の許可があれば可能なもの、外国人事業委員会の承認で商務省事業開発局長が許可した場合には参入可能となる業種があります。
適用除外制度は次のようになっています。
- タイ政府の許可を受けて事業を営む外国人
- 通所条約等に基づいて事業を営む外国人
<タイ米友好条約の適用を受けるための資格>
①タイ法人または米国法人であること
②株式と株主等の過半数が米国籍の保有であること
③取締役の過半数が米国人かタイ人であること
④代表権(サイン権)が1名に与えられる場合、米国人か タイ人であること
⑤代表権が共同サインの場合、サイン権者の過半数が 米国人かタイ人であること
(注)上記の他、手続として在タイ米国大使館の認証が必要
- 投資奨励法に基づく適用除外
タイ投資委員会(BOI)奨励業種や対合業団地公社系列の工業団地に入居する企業
- 日タイ経済連携協定
- 自社及びグループ会社がタイで生産した物品の卸売業または小売業・・・日本側の出資:75%まで (自動車関連の販売会社の場合、日本で生産した物品も取扱可)
- 自社及びグループ会社がタイで生産した物品の保守または修理業・・・日本側の出資:60%まで
- 物流業・・・日本側の出資:51%まで
- 広告業・・・日本側の出資:50%まで
なお、適用除外を受ける外国人は、商務省事業開発局長へ届出をして事業証明書(Foreign Business Certificate)の交付を受けなければならない
増資の要件をクリアすることはできるが、撤退時の元本回収の難易度が高いこともあり、親子ローンや、現地での資金調達(地場金融機関からの融資)も検討に入れたい。
(参考)基礎的経済指標
2015年 | 2016年 | 2017年 | |
実質GDP成長率 | 2.9% | 3.2% | 3.79% |
名目GDP総額 | 401.40(10億ドル) | 411.76(10億ドル) | 450.22(10億ドル) |
一人当たり名目GDP | 5,381USD | 5,970USD | 6,591USD |
政策金利 | 1.5% | 1.5% | 1.50% |
米ドル為替レート (期中平均) | 34.25バーツ | 67.03ルピー | 64.46ルピー |
為替相場管理 | ドルを中心とした通貨バスケット制から管理フロート制へ移行(実質的な変動相場制) |
出所:JETRO
なお、日本政策金融公庫はタイ大手商業銀行の「バンコク銀行」と「スタンドバイ・クレジット制度」にかかる業務提携契約を締結しております。