中国からの事業撤退コスト

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親会社からの出資は、おそらくどの国に対しても、中長期的な現地法人の資金調達として最も有効な手段の一つといえるでしょう。しかし考えなければならないのは、まずどのようにその資金を回収するのか、最悪撤退するとき、どうなるのかということです。

事業継続中の資金回収方法は別途論じるとしまして、撤退するときには通常、現地法人を清算するかもしくは、株式を売却することになります。譲渡益が出た場合、譲渡損になった場合、それら税務コストの問題が出てきますが、それも今回は割愛するとしまして、簡単に撤退できるのかどうか、ということです。

ここでは中国の撤退について考えてみます。合弁企業の場合には合弁相手との折衝が不可欠です。さらに合弁であろうと独資(単独出資のケース)であっても、撤退には当局の認可が必要です。しかし中国の場合、税収や雇用の観点から当局が撤退を認可せず、清算手続きがスムーズに進まないことの方が普通です。

具体的な清算手続きについては、商務局より解散の認可を得て、清算期間に入ります。清算期間中に資産の処分や債務の弁済を進め、清算所得は企業所得税率(25%)で課税されます。資産の処分や債務の弁済が終了すると、税務登記の抹消を申請するのですが、その前に税務調査を受けることになります。その税務調査も中々始まりません。当然調査が終了しなければ、清算できません。税務登記が抹消すれば、清算監査を経て、残余財産を分配し、利益剰余金部分は10%の源泉課税がなされます。清算する場合には上記のプロセスが必要ですが、持分譲渡はここまでのプロセスは必要ありません。

会社を設立するときには、税制優遇を図り、色々と便宜を図り、しかもメーカーなら50年、販売会社なら最低の経営期間20~30年と期間を設けます。その結果、どうなるかといいますと、便宜を図った間の税金を払え、ということになります。

また、リストラで労働争議に発展すると、当局の心証が悪くなって、許認可が下りにくくなりますし、整理解雇時に従業員に渡す経済補償金を法定より上乗せするなどして、トラブルを回避しつつ慎重に進めていくしかない。なるべく徐々に縮小していって、損失を抑えるという方法です。

中国における撤退手法をまとめると次のようになります。

会社存続
持分譲渡現実的だが持分を買い叩かれる。
合併中国の別会社と合併させ、事実上閉鎖。地方当局との交渉がカギ
減資資本金を減らす。事例は稀。
会社清算
清算許認可がおりにくい。規模を縮小し、影響を小さくしてから行うべき。
破産裁判所もあまり受理しない。事例は稀。

まあ、要するに中国は金出せ、全部おいてけ、という国だと思っておけば間違いないでしょう。それくらいの割り切りで進出するのであればよいと思います。その高いハードルを越えた先に、巨大マーケットが待っていることは否定できません。

上記例を見る限り、持分譲渡が一番手間がかからなくていいのですが、買い叩かれは必須。あのカルビーさんは、2,000万アメリカドル(51%の持分)を投資して、撤退するときの譲渡価格はたったの1元(19円)。20億円以上中国に置いてきたことになるのです。

反日感情ですらも、政治的に活用するような国なので、進出したらしたで面倒なことが多いです。それもあるので、出資は少なめに、利率は高いかもしれませんが、現地で借り入れを起こせる状況を早めに作り出すことは非常に大切な戦略であると思います。アジアには親日国が多いとは言っても、新興国としては、やはりお金は欲しいものです。親会社の依存度を減らすような、現地法人のファイナンスを模索することをお勧めします。

なお、日本政策金融公庫は2016年6月29日に中華人民共和国の大手商業銀行の「平安銀行」と「スタンドバイ・クレジット制度」にかかる業務提携契約を締結しております。

金融機関名 平安銀行(Ping An Bank Co.,Ltd.)
資本金 1,615億人民元(2兆7,358億円)
貸付残高 1兆2,161億人民元(20兆6,007億円)
総資産 22兆5,906億インド・ルピー(42兆4,702億円)

※1人民元=16.94円

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